どうも、就労系福祉サービスの管理者兼サービス管理責任者として8年以上障害のある方や就職に課題を抱える方を支援してしているナッツです。
障害や病気を抱えながらも自分に合った働き方をしたい人の収入アップ、スキルアップを応援したいと思い、情報を発信しています。
「就職先に自分の障害を正直に伝えるべきか…」
「伝えることによって不利益をこうむることはないだろうか…」
就職活動をする際、そんな風に悩む方は大勢いらっしゃいます。
オープン就労は障害を開示して働くこと、クローズ就労は開示しないで働くことですが、両者にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
この記事では、オープン就労とクローズ就労の違いから、メリット・デメリット、選ぶ際のポイントについて、わかりやすく解説します。
オープン就労 ➡ 障害に配慮を受けながら無理なく働けるのが魅力だが、給料は少なめ。
一般雇用枠と障害者雇用枠で多少異なる。
クローズ就労 ➡ それなりの給料を望めるが、無理に続けると離職に繋がりやすい
大切なのは、「自分にとってどちらが働きやすいか」を見極めること💡
オープン就労 | セミオープン就労 | クローズ就労 | |
障害の開示 | あり | あり(人事や上司など一部の人) | なし |
採用枠 | 障害者雇用枠、一般雇用枠 | 一般雇用枠 | 一般雇用枠 |
配慮・支援 | あり | 状況による | なし |
求人数 | 少なめ | 多め | 多い |
給与水準 | 低めな傾向 | 一般的 | 一般的 |
長期定着 | しやすい | クローズよりはしやすい | 状況による |
オープン就労・クローズ就労の概要
- オープン就労
障害を開示して働くこと。障害者雇用枠だけでなく、一般雇用枠でオープンにする働き方も含む。障害者雇用枠で働くには基本的に障害者手帳が必要。 - セミオープン就労
一部の同僚や上司にのみ障害を伝え、必要最小限な配慮だけ受けて働く働き方。企業の理解や話し合いが不可欠。 - クローズ就労
障害を開示せずに働く働き方。障害者手帳の取得は必須ではない。
就労形態はおおまかに下記の図のように分けられます。
障害者雇用枠とは、障害を持つ人を積極的に雇用するために設けられた募集枠のことを指し、法定雇用率にカウントされるのは主にこれにあたります。
法定雇用率とは、企業等で雇用を義務付けている人数の割合のことで、障害者雇用を社会的に推進するために障害者雇用促進法で定められています。
2024年4月に2.5%に上がり、2026年7月に2.7%に上がることが決まっています。

オープン就労のメリット・デメリット

オープン就労のメリット・デメリットを紹介します。
一つ注意点として、企業も障害者雇用を模索していますが、企業によってまだまだ障害に対する理解や配慮に差があるのが現状です。
オープン就労だから安心とは限らず、ここら辺は一般雇用の就職と変わりません。
メリット
- 障害に対する配慮を受けられる
- 体調に無理なく働け、通院の理解も得られやすい
- 一般雇用枠では一握りの人しか入れないような大企業に入社できる
障害に対する配慮を受けられる
一般雇用枠でも受けられないことはないですが、環境や仕組みが整っていないことがあります。
配慮を受けられる分、離職リスクは減ります。
受けられる配慮には下記のようなものがあります。
- バリアフリー環境の整備
- 通勤支援
- 業務時間の調整
通勤支援では、マイカー通勤者向けの駐車場の専用スペース確保、通勤困難な方に向けたシャトルバスの運行・テレワークの承認・介助者の費用補助などがあります。
介助者とは、例えば、視覚障害がある方に向けたガイドヘルパーなどです。
業務時間の調整では、例えば、ラッシュアワーを避け、フレシキブルな出社時間の設定が挙げられます。
- 休憩時間の柔軟な設定
- 業務量の調整
- ストレス管理のための相談窓口
- 明確な指示やマニュアルの提供、
- できる作業環境の整備
- 簡潔で明確な指示
- 図やイラストによる可視化
- 一度に覚える業務量の調整
体調に無理なく働け、通院の理解も得られやすい
無理のない働き方ができ、体調不良の際は休憩が取りやすいです。
通院はなるべく、休日に調整した方が好ましいですが、平日も理解が得られやすいのが助かります。
一般雇用枠では一握りの人しか入れないような大企業に入社できる
入社したいと思っても中々できないような大企業に就職できるチャンスがもらえます。
ネームバリューや充実した福利厚生を望む方には大きなメリットといえるでしょう。
デメリット
- 給料が低いことが多い
- 一般雇用枠に比べ、求人数が少なく、希望の職種や業務につきにくい
- 障害を公表することで、偏見や先入観をもたれる可能性がある
- プライバシーの喪失につながる
給料が低いことが多い
障害者雇用は障害特性への配慮から時短勤務や比較的簡単な業務を任せられることが多く、その分給料が低くなる傾向があります。
正社員登用、チームリーダーや管理職のポストがある企業もありますが、キャリアップ体制が明確になっていない会社も見られます。
正社員登用の条件として見られるのは、経験年数や担当業務の増加、フルタイム勤務などで、信頼と安定感、業務貢献度が重視されます。
一般雇用枠に比べ、求人数が少なく、希望の職種や業務につきにくい
クローズ就労で障害があることを伝えて応募することもできなくありませんが、基本的に障害特性に対する配慮を前提とした求人ではないため、選考のハードルは高くなります。
検索しても希望の求人が見つからないという方は、障害者専門の転職エージェントを利用するのも方法の一つです。
障害を公表することで、一部の同僚や上司から偏見や先入観をもたれる可能性がある
特に、障害理解の低い職場では、誤解や不当な扱いを受けることが考えられます。
障害を理由とした差別や不当な取り扱いは障害者差別解消法で禁止されています。
悩んだときは一人で抱え込まず、役所の窓口や支援者に相談しましょう。
プライバシーの喪失につながる
障害を公表することは、自身のプライバシーをある程度開示することにつながります。
障害の詳細や健康状態を職場に知られることに抵抗を感じる方にはデメリットとなります。
クローズ就労のメリット・デメリット

メリット
- 求人が多く、選択肢が豊富
- 障害者雇用に比べ給料が多くなりやすい
- 偏見や先入観を受けにくい
求人が多く、選択肢が豊富
職種・業種ともに数が多いため、希望する仕事が見つかりやすいです。
障害者雇用に比べ給料が多くなりやすい
正社員や専門的スキルを求められる職種、管理職の割合が多く、相対的に収入が多くなります。
偏見や先入観を受けにくい
配慮は受けられませんが、障害というフィルターの影響を受ける可能性のない、まっさらな状態で働くことができます。
デメリット
- 体調を崩し、離職に繋がりやすい
- 障害を開示していないことを後ろめたく感じ、精神的なストレスになる可能性がある
- 定着支援が受けにくい
体調を崩し、離職に繋がりやすい
症状が重くて本当は休みたい、特性が原因でミスが増えてきたなど、困った状況になっても配慮を受けられず、無理を重ねがちです。
通院もしづらく、体調不良が多いと継続できるか心配される可能性があります。
障害を開示していないことを後ろめたく感じ、精神的なストレスになる可能性がある
本来、開示していないからと後ろめたく感じる必要はありませんが、何か隠し事をしているようで、落ち着かず、心理的なプレッシャーに感じる方もいるでしょう。
クローズ就労は職場にバレる?
気になる人も多いと思いますが、基本的に自分で言わない限りバレることはありません。
頻繁に通院や服薬している様子だと、病気を疑われることはありますが、障害に直接結びつけられることはありません。
障害年金を受給していても、障害年金は非課税所得のため、年末調整の手続きで知られてしまうこともありません。
一つ可能性を挙げるとすれば、障害者手帳や書類が偶然目に入って知られてしまうことは考えられるため、扱いに気を付ける必要があります。
定着支援が受けにくい
定着支援を依頼する場合、職場の外で面談をすることになるほか、業務の調整など支援者側から職場へ働きかけることができません。
定着支援には大きく2つの種類があり、ひとつは就労移行支援や就労定着支援など障害福祉サービスによるもの、もうひとつは障害者就労支援センターが行う障害福祉サービス外のものがあります。
特に前者の定着支援サービスは就労移行支援や就労継続支援サービスを利用した就職でないと使えないことを覚えておきましょう。
定着率で見るオープン就労、クローズ就労
こちらは障害者職業総合センターがまとめた就労形態ごとに見た一年後の定着率です。
こうしてみると10人クローズ就労したとしたら7人は一年以内に辞めていることになり、オープン就労に比べ離職リスクが高いことがわかります。

オープンvsクローズ、自分に合った働き方を選ぶためのポイント

- 自分の障害特性を客観的に把握する
- 働く目的・価値観を考える
- 体調の安定度で決める
- 信頼できる人に相談する
自分の障害特性を客観的に把握する
障害によってどんな場面で困りそうか(困ってきたか)、安定して働くために必要な条件はなにか、これらを整理することで、オープン、クローズどちらを選ぶべきか、一つの判断材料になります。
働く目的・価値観を考える
「収入を重視したい」ならクローズ、「長く安定して働きたい」ならオープン、「将来的に一般雇用を目指したい」なら、最初はオープン就労から始めた後、クローズに挑戦する。といった選択肢があります。
実際の現場では、就職後に体調を崩して「クローズ就労からオープン就労に切り替える」ケースもあります。
近年では、働く人の多様性を尊重する企業も増え、障害者雇用枠でも専門性のある仕事を任せる職場も出てきています。
柔軟な選択肢を視野に、自分に合った働き方を模索することが大切です。
体調の安定度で決める
新しい環境に移ってちょっとしたことがきっかけで崩れる心配はないでしょうか。
人間関係、通勤、業務、社内ルールなど、転職は新しいこと尽くしです。
一つ二つは耐えられても、複数のストレスが重なると疲れの蓄積から体調を崩す方も多く、冷静に判断することが大切です。
信頼できる人に相談する
就労移行支援事業所、計画相談、医師、家族など、第三者の客観的な意見も非常に役立ちます。
特に就職活動をする際は、主治医に医療的な面から就労許可をもらっておきましょう。
オープン就労の求人の探し方
オープン就労の探し方がわからないという方もいるでしょう。
ここでは2つの方法を紹介します。
1.ハローワーク

ホームページで自分で探すか、窓口で相談することができます。
ホームページで検索する方法は、ハローワークインターネットサービスを開き、障害のある方のための求人に✅を入れて検索するだけ。
スマホがあればどこでも見ることができます。
窓口で相談する方法では、わからないことをその場で質問できるのがメリットですが、行く手間や待ち時間が発生します。

2.障害者向け転職サービス

障害者向け転職サービスには、転職サイト型とエージェント型の2つがあります。
転職サイト型は自分で検索し、自分のペースで利用することができます。
中には、プロフィールを登録しておくと企業からスカウトがくるサービスもあります。
エージェント型は、プロのエージェントから求人を紹介してもらえたり、転職活動のアドバイスをもうらうことができます。
詳しくはこちらで解説しています。
自分に合った働き方がわからない場合

そんな時は就労支援機関で相談してみるのもおすすめです。
支援機関には、次のようなものがあります。
- 就労移行支援事業所
- ナカポツ(障害者就業・生活支援センター)
- ハローワークの障害者専門窓口
- 地域障害者職業センター
就労移行支援事業所
障害のある方が一般企業で働くのを後押しするため、職業訓練や就職活動の支援を行う福祉サービス。
自己理解を深めるプログラムを通して、自分に合った働き方を改めて考えたり、客観的アドバイスをもらうことができます。
詳しくはこちらで解説しています。
ナカポツ(障害者就業・生活支援センター)
障害を持つ方の就労や生活をサポートする場所です。
就労面では、就職に関する相談支援を行なっており、アドバイスを受けることができます。
その他に、自分に合った仕事を見極めるための職場実習を紹介してもらえたり、履歴書の書き方を教えてもらえます。
ハローワークの障害者専門窓口
ハローワークには一般求人とは別に、障害者専門の相談窓口があります。
障害の状況やこれまでの経験などを職業相談を通して聞いたうえで、アドバイスをもらえたり、関係機関を紹介してくれます。
地域障害者職業センター
職業相談や講座を通して自分に合った働き方を考えることができます。
特徴的な点として、作業検査や適性検査で分析を行なっています。
その他にも、自信の障害特性についてまとめたナビゲーションブックの作成や模擬面接を行なったりします。
まとめ
オープン就労 | セミオープン就労 | クローズ就労 | |
障害の開示 | あり | あり(人事や上司など一部の人) | なし |
採用枠 | 障害者雇用枠、一般雇用枠 | 一般雇用枠 | 一般雇用枠 |
配慮・支援 | あり | 状況による | なし |
求人数 | 少なめ | 多め | 多い |
給与水準 | 低めな傾向 | 一般的 | 一般的 |
長期定着 | しやすい | クローズよりはしやすい | 状況による |
オープン就労とクローズ就労には、それぞれに良い面もあれば、課題もあります。
大切なのは、「どちらが正解か」ではなく、「自分にとってどちらが働きやすいか」を見極めることです。
今の自分の状況、体調、働く目的などを丁寧に見つめ直し、必要であれば支援の専門家と相談しながら、納得できる選択をしていきましょう。
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